数日前からパルは屋内で暮らすようになった。急激に体力が落ちたためにこの寒さと滑りやすい雪の中ではまともに生活できなくなったと判断したからだ。 意外だったのは、これまで屋内に入れただけですぐに外に逃げ出そうとしていたパルがおとなしく中で寝るようになったことだった。それも、ヒーターパネルの上でフリースの毛布をかけて。 最初玄関で環境に慣らして、昨日から居室の一つを専用に改装してそちらに移した。ホットカーペットに老犬介護用ベッドマット・・・。パルはとても快適そうにすやすやと眠っている。 生きるということがこんなに安寧(あんねい)でいいのだろうかと思案しているようにも見えるとても穏やかな表情だ。全身で僕らへの信頼と愛情を表現するパルに僕らも胸に迫るものがある。 さしあたって大きな健康的問題があるわけではない。しかし認知症的な症状が数多くみられ、末梢神経への伝達がうまくいかないために足腰が立たなくなっている。 彼に苦痛を与えてまで延命を図るつもりはない。家族で話し合って決めたことだ。自然の中で自然のことわりにしたがって生きてきたパルだからこそ、自然の流れに任せようと考えている。 ただ苦痛や不安のない安らかな余生を一日でも長く僕たちとともに過ごしてほしいと思っている。なんだか「おくりびと」になったような気がしてしょうがない。 彼のために何でもしてやりたいという思いで、夜中でも早朝でも何か声が聞こえればがばっと飛び起きて駆けつけて癒すという使命を帯びたようにも感じられる。しかもその行為そのものが僕らの喜びでもある。 パルは「ペット」では決してなく、 「飼い犬」でもなく、「犬」ですらない存在なのだ。あえていうならば我が家という「群れ(むれ)」の大切な一員であり家族である、ということなのだと思う。 パルとともに過ごすことのできる一日一秒がとてつもなく貴重なものに感じられる。ああ、改めて思う、パルは僕らにとってかけがえのない唯一無二の存在なのだ、と。
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