晴れ 気温:最低 12℃/最高 21℃
いつものように静かな夏を迎えています。
静かという意味はお客様が少なくて閑散としているということではなく、たくさんのお客様がピラタスの丘ペンション村を訪れているにもかかわらず、この森はいつもと変わらない静寂に満ちているということです。
それがディベロッパーが開発したペンション村と、広大な別荘地に30軒ほどのペンションが散在するピラタスの丘ペンション村との決定的な違いです。敷地はどこも300坪から400坪もあります。敷地内に森や林があるのです。こんなペンション村は全国でも数少ないと思います。
真夏のこの季節でも、館内の換気をするとき以外は窓を閉めていることの方が多いのです。信じられないかもしれませんが、それがピラタスの丘の夏の気候なのです。北八ヶ岳の中腹、標高1700から1800mに位置するので、日中でも最高気温は20℃に達しないことが多いのです。
朝夕は7℃から13℃まで冷え込むので、昼夜を問わず都会のようなまとわりつくような暑さとは全く無縁の別天地なのです。館内でも夜はTシャツの上にフリースを羽織ってちょうどいいのです。
眠るときは窓を閉め切って、厚手のトレーナースーツをパジャマ代わりにして、ふかふかの冬用羽毛布団にくるまって眠るのです。至福の眠りが堪能できます。寝汗なんてまったくかきません。真冬に暖かな布団で眠るときのような幸せな気分です。
夜もまた静寂が支配します。ここで暮らす我々はその静寂の中に自然のたてるかすかな音や野生動物の様々な気配を感じることができますが、お客様はきっと信じられないほどの安息に満ちた静けさだけを聴くことになるのです。
なにをしていても、いつでも、耳の奥からきーんという静寂の音(サウンド・オブ・サイレンス)が聞こえてくることでしょう。
さて、窓を開けると、びっくりするほど冷たい風が吹き込んできます。昨日までとは別次元の冷風です。そう、涼風というよりは「冷風」です。そういえば、暦の上では今日は「立秋」なのでした。
蓼科では、特にピラタスの丘では、この日には必ず「秋風」が立ち季節ははっきりと秋という季節へと梶を切るのです。そのことは今日という日に立ち会った誰もが実感できる季節感の変化です。
残暑のまったく無い蓼科では、夏から秋への移ろいは緩い下り坂のように穏やかなものです。まだまだ夏だと思っているうちにいつしか季節ははっきりと移り変わっているのです。
いましも、強烈なオレンジ色の光がラウンジを赤々と染めて輝きました。沈みゆく夕日の最期の光芒です。それもほんのひととき、すでにその面影もなくラウンジは再び薄墨のような闇に沈んでいきます。
そう、僕は今日は久しぶりに吹き抜けの大テーブルでこの日記を書いています。急にもの悲しさが僕の胸をいっぱいにします。それは僕がもう恋とは無縁の存在になってしまったような気がするからかもしれません。
ふと気づけば、ずうっと引きずってきていた若い頃の恋がすべて美しい思い出になってしまっていた。僕はいまそれを冷静に対象化して観ることができる。客観的に思いを巡らせることだってできるのだ。
そこにはあれほど愛した女性への想いのかけらも再生できない自分が実況見分のように現れるばかりだ。言葉を換えるならばそれはこういうことだ。僕はあの頃の僕に戻ってあの頃の君を抱くことはできるが、いまの僕がいまの君を抱くことはできない。互いの想像力の中でのみぼくらはあの恋を再生することができる。
それは自然なことだが、とても残酷なことでもあると思う。
だからこそ若い頃の恋に臆病になってはいけない。
そこにあるのはかけがえのない「いま」だけなのだから。
※写真をクリックすると拡大してご覧いただけます。
最近のコメント