別荘の管理事務所や郵便局
土産物屋や共同温泉浴場
広い駐車場
そんなものが整備された場所から
遊歩道に入り
ほんの数十メートル進んだだけなのに
そこはもう
全くの別世界だった
道の右手から左手に下る斜面の
ちょうど中程を
遊歩道は貫いている
右手に小さめの石を積んだ
土留めの石垣が
苔(こけ)むした斜面を構成し
左手はすとんと落ち込む斜面に
多数の樹木が密生していた
その多くは赤松やシラビソやカラマツ
そして広葉樹の白樺やダケカンバであり
その下にはナナカマドの紅葉が
蛍光オレンジの光を放っていた
光を求めて
彼らは空間を奪い合っていた
他の樹木を迂回するように
幹は曲がりくねり
水平方向に長く枝を伸ばして
絡み合うその姿は
理屈を越えたおぞましいばかりの
生への執念を感じさせる
道の表面に浮き出て
のたうつ根も
また
ぞっとさせるような気迫に
満ちていた
戦いに敗れ
枯れて倒木となり
朽ち果てた巨木の根が
1メートルほどの高さを残して
道の真ん中に残っていた
その造形美に惹かれて
思わずシャッターを切る
信じられないほどのスローシャッターだ
どんなに暗くても
僕はフラッシュを使わない
三脚も使わない
だから全神経を集中して
撮影に没頭した
写真を撮り終えて
ふと気づくと
その一角だけが
異様に寒く感じる
周囲の世界から隔絶された
別の時空間のように感じられる
かれらは
僕が森を出るころ合いであることを
警告していた
たしかに
あたりはもうすっかり闇に支配されていた
その時初めて
間近に渓流の音があることに気づく
浮き出た木の根と
ぬれた落ち葉が
足もとをおぼつかなくさせている
こんな時間に
こんなところで怪我をしてしまったら
一夜をここで過ごさなければならなくなる
彼らは正しかった
しかし
足早に森を抜けて
遊歩道を入口まで戻ると
そこにはあまりにも鮮やかな
夕景があった
まだ日は暮れていなかったのだ
(つづく) ★写真をクリックすると拡大してご覧いただけます。 --- 同じ著者が想いを語るまったく雰囲気の違うブログ「たてしなクロニクル」はこちら。↓ http://ameblo.jp/tateshina-chronicle/ 雨の降る森のような静けさをもったブログ。アクセス数がこのブログの8倍あります。 --- 全館高速無線LAN完備で、ノートPC持参でブログ更新も楽勝!(無料) ペンション サンセットの公式ホームページはこちらです。▼ http://www.p-sunset.com/ 公式ホームページからご宿泊予約なさりたいお客様はこちらからどうぞ▼ http://www.p-sunset.com/reserve/
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