今日も うつらうつらとするうちに 夜が明ける 外気温は氷点下10℃ 14歳のシベリアンハスキー パル君が今夜はとくに強い神経症状を 示しているからだ 自覚症状のない徘徊(はいかい) 無駄吠え (といっても耳が聞こえないので小さな声だが) そう、パル君は半年ほど前から突然耳が聞こえなくなった 原因は「老化」によるものといわれた 鼻も利かなくなってきた 眼力だけはたもってきたが 最近はそれも危うい 老化とはじつに過酷である そのことに ひとも犬も かわりはない 水を飲みに外に出たはいいが 犬舎に戻れない わずかな段差が上れないのだ 雪と氷に覆われた地面に 足を取られて 立ち上がれなくなる 雪と氷の国からやって来た犬としては 内心忸怩(じくじ)たるものがあると思う 僕だったらプライドがずたずただろう それでも彼は 淡々と生きようとしている あるがままの自分で 僕らにできることは そんな彼の望みを 少しでも叶える手助けだけ だから お客様のいらっしゃらない日は 不寝番(ふしんばん)をしているというわけだ パジャマの上にダウンパーカを羽織って いつでも介助のために 外に飛び出せるように いまではこうして居室にいても 窓外の犬舎のパルの寝息が まどろむ彼の夢が 我がことのように感じられるようになった --- ●ペンション・サンセット ●蓼科高原日記 ☆たてしなラヂオ☆
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