折からの陽気に クルマの窓を全開にして スキーから戻ってきて、 サンセットの駐車場に乗り入れる。 そのままエンジンを切ると、 めまいのするような静寂が押し寄せてくる。 それはまるで質量を持っているかのような 圧倒的な静寂だ。 そっと目を閉じる。 風が頬をなぶり、 ほのかな春のにおいがする。 さわさわと風の音が聞こえる、 野鳥の声が聞こえる。 この瞬間が僕は好きだ。 真っ白な雪の上に 惜しみなく降り注ぐ陽光は まるで神の慈しみのようだ。 芽吹きの準備に余念のない 樹木や灌木の影がくっきりと 映し出されている。 モノクロームの世界なのだけれど、 ハイコントラストな情景の中に すべての色が隠されているのを感じる。 真夏の あの百花繚乱の極彩色の世界が 僕には見えてくる。 静かだ。 本当に静かだ。 聞こえるのは風の音だけ。 そして感じるのは 音もなく降り注ぐ このあふれるばかりの陽光の感触。 きめ細かな光の粒子を感じる。 このまま春になってしまうのだろうか。 いや、そんなはずはない。 でもここにあるのは、 もう二度と雪なんか降らないのではないか というほどの 「まぼろしの春」。 --- ●ペンション・サンセット ●蓼科高原日記 ☆たてしなラヂオ☆
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