今日息子から"Harbie Hancock"の3枚目のリーダー・アルバム"Maiden Voyage"(処女航海)をプレゼントされました。ちょっと早いお誕生日プレゼントだそうです。このアルバムは僕が大学生時代にアルバイトして「自分で購入した」初めてのジャズ・レコードなのです。1965年に録音されたものですが、僕が手に入れたのは1970年のことでした。ちなみに僕が初めて手にしたジャズ・レコードは伯父からもらった"MJQ(Modern Jazz Qualtet"の名作"Vandome"でした。いまでもそれらは3,500枚にのぼるジャズ・レコード・コレクションの1枚として所有してはいるのですが、LPレコードゆえになかなか聴く機会が無かったのです。で、今回CDをプレゼントしてくれたわけです。 "Harbie Hancock"はスタンダード・ナンバー「ウォーターメロンマン(スイカ売り)」の作曲者として同名のジャズアルバムで一世を風靡したジャズ・ピアニストです。"Maiden Voyage"を世に出した頃は黄金の"Miles Davis Quintet"の新進気鋭の若きピアニストでした。ベースが"Ron Carter"そしてドラムスが"Anthony Williams(Tony Williams)"というこのリズムセクションはいまとなってはまさに夢のようなパーソネルです。サックスが"George Coleman"そしてトランペットが"Freddie Hubbard"というジャズ・ファンなら背筋がぞくぞくするようなアルバムになっています。(要するに当時の"Miles Davis Quintet"のトランペットが入れ替わっているだけというものすごいパーソネル!) この音楽にぼくがどれほどの衝撃を受けたかを語ることはほとんど不可能なほどです。それはビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」あるいはクリームの「フレッシュ・クリーム」を聴いた時と同じかそれ以上のショックでした。「あたまをガツンと一発」といった感じでしたね。 若い頃から音楽に親しみ一時はミュージシャンを目指して幅広い音楽をむさぼるように聞き込んでいなかったなら、村上春樹作品に対する僕の感覚もいまとはかなり変わっていたというか、ほとんど理解できなかったかもしれません。少なくとも音楽が人生の一部を成していないひとには理解が困難かもしれないですね。 20年来の友人ウォン・ウィン・ツァン氏がいまから30数年前「江夏健二」という名で新宿の小さなライブハウス「ピット・イン」の「昼の部」でこのアルバムの曲を演奏していたまさにその時、当時高校生だったぼくが2mと離れていない客席でその演奏を聴いていたという事実を昨年ひょんなことから思い出しました。本人に確認すると果たしてそのとおりだったのです。何という巡り合わせでしょうか。ちょうど彼が20歳、ぼくが17歳ぐらいだったでしょうか。その演奏はいまの「癒しに満ちた」ウォン氏の音楽からは想像もつかないほど激しくそして怒りに満ちたものでした。 人生はじつに不可思議な巡り合わせに満ちています。もちろん「素晴らしい」という意味において。 --- ●ペンション・サンセット ●蓼科高原日記 ☆たてしなラヂオ☆
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